経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

小売業販売額の2年連続低下に対する原因となった燃料小売業販売額、その背景を「名目」と「実質」にこだわって見てみました。

 平成28年の小売業販売額の特徴の一つとして、2年連続で燃料小売業販売額が最も大きな低下寄与を見せたことを挙げることができます(ミニ経済分析「平成28年小売業販売を振り返る」参照)。

 ただ、燃料という生活必需品が、大きく変動するのは、不思議といえば、不思議です。

 そこで今回は、燃料小売業(ガソリン、灯油、プロパンガスなどの燃料を、主に一般消費者に販売する商店)の販売額の大きな前年比低下を、「名目」と「実質」にこだわって検証しました。

 

燃料小売業販売の名目指数と実質指数の動きには大きな違い

 燃料小売業販売には、2つの指数が存在します。一つは、商業動態統計における燃料小売業販売額指数で、こちらは「名目指数」です。もう一つは、サービス産業(第3次産業)活動指数における燃料小売業指数で、こちらは「実質指数」です。名目と実質の違いは、価格変動の影響を含むかどうかであり、名目はそれを含み、実質は含まない(数量ベース)ものとなります。

 同じ燃料小売業販売動向の指数でも、平成20年以降の四半期推移グラフをみると、次の3つの時点で動きに違いが見られます。

 ① リーマンショック後の底打ちタイミングが、名目指数で2四半期の遅延

 ② 平成22~25年では、実質指数は低下基調、名目指数は上昇基調

 ③ 平成26年以降、名目指数はそれまでの上昇を打ち消すほどの低下

 

 

 また、総じてみれば、名目指数は実質指数と比較して上昇・低下が激しくなっている感があります。

 

実質指数と名目指数の差は、燃料小売価格の変動にあり?

 この名目指数と実質指数の動きが異なる背景を探るため、燃料小売価格の動きを重ねてみると、次のようなことが分かります。

 

① 底打ちタイミングの違い

 小売価格は、平成20年第3四半期に急騰し、名目指数の水準を押し上げました。価格上昇が、数量ベースの実質指数の一歩早い低下を補いました。その後の小売価格の急落、底打ちという動きと連動する形で名目指数は推移します。実質と名目の底打ちのタイミングの違いは、小売価格の急激な変動によるものでした。

 

② 平成22~25年の基調の相違

 この時期の小売価格は、ほぼ一貫した上昇で、名目指数も同じ動きです。実質指数は、緩やかな低下基調でした。この時期の名目と実質の動きの違いの原因は、価格の持続的な上昇です。

 

③ 平成26年以降の基調の相違

 この時期に小売価格が急速に下落し、名目指数も急落します。実質指数は安定した動きです。また、平成28年に入ってからは小売価格が安定し、名目指数と実質指数の動きがほぼ同期します。

 

 

名目指数の前年同期比を価格要因と数量要因に分解すると

 名目指数(金額)の対前年同期変化率を、「実質指数(数量)の前年同期変化率」と、「価格(単価)の前年同期変化率」に分解してみると、消費税率引き上げ直後の一時期を除き、ここ数年の名目指数の変化は「主に価格の変化に主導されていた」ということになります。

 価格の変化を受ける名目の小売業販売額は、販売数量がそれ程変わらなくても、大きく変動しますので、注意が必要です。

 

 

 サービス産業(第3次産業)活動指数の小売業活動指数、またはその内訳である業種別指数は、物価変動を除去した実質指数です。是非、小売業の名目販売額を利用する際には、この実質指数も併せて見ていただくと良いと思います。

 

 

◎ひと言解説の一覧表

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◎ナレーション解説

 

http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20170512hitokoto.png