経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

9月鉱工業指数まとめ-9月の鉱工業生産は前月比0.6%上昇、四半期ベースでも2期連続上昇。生産能力指数が7か月ぶりに前月比上昇のため、稼働率は前月比低下。10月以降の生産見込みは横ばい程度の推移が見込まれるが、マインド指標では「強気」

1.生産、稼働率
 平成28年9月(確報)の鉱工業生産は、指数値で98.4、前月比0.6%上昇(8月確報97.8、前月比1.3%)、2か月連続の前月比上昇でした。比較的高い前月比上昇を見せた8月の水準を更に上回り、今年1月の季節調整済指数値を超え、今年最も高い指数値となりました。

 9月実施の生産予測調査の補正値では、前月比1.5%上昇が見込まれ、それよりは実績が落ちましたが、想定レンジ0.5%~2.6%の間には収まりましたので、当初の生産計画からあまりずれない順当な生産がなされたということかと思います。

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 9月確報値を踏まえると、今年の第3四半期の指数値は97.6、前期比1.3%上昇と2四半期連続上昇です。さらに、前年同期比を見るとプラス0.4%上昇と、9四半期ぶりに前年水準を上回りました。四半期の生産が前年水準を上回るのは、平成26年第2四半期以来であり、非常に久方ぶりのこととなります。

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 9月の鉱工業生産の業種別の動きをみると、全16業種のうち、9業種が生産前月比上昇となっており、輸送機械工業が前月比4.5%上昇、はん用・生産用・業務用機械工業が前月比3.8%上昇と寄与が大きくなっています。他方、低下業種としては、情報通信機械工業が前月比マイナス11.8%低下と大きく低下し、電子部品・デバイス工業も前月比2.7%低下でした。この2業種は、8月の生産けん引役でしたが、その勢いは続きませんでした。

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 第3四半期の業種別の動きをみると、輸送機械工業(前期比2.1%上昇)、電子部品・デバイス工業(前期比4.6%上昇)などの寄与が大きくなっています。低下業種としては、金属製品工業、石油・石炭製品工業などが前期比マイナスですが、それ程大きな低下寄与ということでもありません。第3四半期は、業種全般的に良い状況だったと言えるでしょう。

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2.生産能力、稼働率指数
 平成28年9月の生産能力指数は、前月比0.1%上昇と7か月ぶりに前月比上昇となりました。モス型半導体集積回路の能力が上昇した電子部品・デバイス工業、金属工作機械や油圧ポンプの能力が上昇したはん用・生産用・業務用機械工業などの寄与によるものです。ただし、前年同月水準との比較では、14か月連続でマイナスが続いており、低下基調が続いています。

 9月の生産能力指数を機械工業と非機械工業(製造工業から機械工業を除いた分類)の動きでみると、非機械工業では、96か月連続で前年水準を下回る状態で、余剰設備の削減が続いており、前月比は横ばいでした。一方、機械工業では、生産能力が7か月ぶりに前月比上昇となり、前年同月比も横ばいとなりました。特に、その内容を確認すると、設備を実際に増強しているとのお答えも多く、今年度に入ってからの資本財の国内向け出荷の好調が、少し生産能力指数に反映されてきているようです。

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 9月の稼働率指数は、指数値96.7、前月比マイナス2.0%低下と4か月ぶりの低下となりました。9月は稼働率の分母である生産能力が上昇しましたので、その分稼働率が低下となりました。

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 生産上昇業種である輸送機械工業の稼働率は前月比2.4%上昇と大きく上昇しましたが、生産低下寄与の大きかった電子部品・デバイス工業では、生産能力が前月比上昇となったこともあり、稼働率が前月比マイナス8.4%と大きく低下しました。8月は電子部品・デバイス工業の稼働率が前年水準を上回りましたが、再び前年同月比マイナス5.1%低下となってしまいました。

 今年の第3四半期の稼働率指数は97.2、前期比1.9%上昇と3四半期ぶりに前期比プラスとなりました。やはり、輸送機械工業の稼働率上昇寄与が大きく、それに次ぐのは電子部品・デバイス工業でした。ただ、その寄与の程度は、輸送機械工業の4割にも満たないものですので、第3四半期の稼働率のけん引役は輸送機械工業だったということになります。

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 過去の生産能力指数と稼働率指数の散布図(循環図)をみると、生産能力指数が継続的な上昇局面に転換したのは、稼働率指数が110前後になったタイミングでしたが、今年第3四半期の稼働率指数は97.2と、転換点の稼働率指数にはまだまだ及ばない状況でした。更に言えば、平成26年第2四半期に能力指数95.1で、転換点の能力レベルを下回ってから、今年の第3四半期には能力指数94.5と更に低下が続いている状態で、大きいスパンでみると、いまだ生産能力は縮小過程にあるようです。

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3.10月以降の生産見込み
 10月に実施した製造工業予測調査の結果では、10月の前月比見込みは1.1%上昇(補正なし)、11月の前月比予測2.1%上昇(補正なし)という結果になっています。

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 10月の見込み値に補正をかけると、前月比マイナス0.1%低下とほぼ横ばい程度に補正されます。その範囲に収まる可能性が高い変動幅を計算すると、マイナス1.1~プラス0.8%という計算結果となっています。
 鉱工業生産の確報実績が前月比0.6%上昇だった訳ですが、9月実施の生産予測調査の結果が前月比2.2%、補正値が1.5%上昇で、変動範囲0.5%~2.6%でしたので、確報値はそのレンジに収まりました。
 10月の鉱工業生産についても、生産活動を想定外に変動させるイベントもありませんでしたので、補正値のような微減から横ばい程度の推移になるのではないかと思います。9月の鉱工業生産の水準は今年の中でも高いレベルですので、その水準が10月、11月と続いていくという解釈ができる結果かと思います。

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 先行き2か月は、はん用・生産用・業務用機械工業と電子部品・デバイス工業の2業種によって生産計画が2か月連続で前月比上昇とはなっています。輸送機械工業の10月、11月と2か月連続の前月比上昇ではありますが、上昇幅が相対的に小さく、全体への寄与が小さくなっています。

 

 さて、生産予測調査の結果を用いて、製造企業の強気と弱気を指標化することができます(アニマルスピリッツ指標)。生産予測調査では、前月実績、当月計画、翌月計画を調査していますが、当月計画に比べて翌月計画が「増えて」いれば「強気」、「減って」いれば「弱気」とし、全体に占める「強気」の割合から「弱気」の割合を引くことで指標化します(計画の増減の計測方法については、注の資料を御覧ください)。

 景気後退局面とそれ以外の分かれ目は、アニマルスリッツ指標がマイナス5程度なのですが、10月調査に基づくアニマルスピリッツ指標はプラス3.3となります。この調査結果に基づけば、マインドは比較的強気ということになります。指標の推移も上向き加減ですので、方向感も良いのかもしれません。

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注:企業の「アニマルスピリッツ」を計測する|その他の研究・分析レポート|アニマルスピリットについて|経済産業省

 

 

◎鉱工業図表集

 

◎鉱工業指数確報 データ冊子

 

◎生産能力、稼働率指数 データ冊子 

 

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