経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

各種指数で計測した業種別労働生産性の変化(その2);サービス産業の労働生産性は5年前と比較して2.7%向上、改善の牽引役は、「金融業, 保険業」

 昨今、サービスの生産性に関する話題が改めて注目をあびています。日本の産業界では長らく重要なテーマと位置づけられており、生産性をどのように把握するのかという点についても、様々な議論がなされてきました。

 今回は、経済解析室で作成している全産業活動指数、第3次産業活動指数、鉱工業指数を用いて、簡易的に労働生産性「指数」(2010年=100)を計測し、その変化を確認してみました。

 本分析による各産業の労働生産性の算出式は以下のとおりです。

 〇全産業の労働生産性=全産業活動指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 〇サービスの労働生産性=第3次産業活動指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 〇鉱工業の労働生産性鉱工業生産指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 〇建設業の労働生産性=建設業活動指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 

 

 さて、サービスの労働生産性は、2015年で指数値102.7という値になっていますが、これは、5年前の2010年に比べてサービスの労働生産性が2.7%程改善していたということを意味します。さらに遡ると、10年前の2005年で指数値104.5、つまり2010年よりも労働生産性の水準が4%以上高かったことになります。リーマンショックが発生する前年、2007年では6%以上高いという計測結果です。

 ということは、リーマンショック後、サービスの労働生産性は、それ以前の水準に到達出来ていないということになります(2011年の指数値が高いのは、東日本大震災によって、労働データに欠落があるためであり、実際の労働生産性はもっと低い値であった可能性が著しく高い)。

  

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 このようなサービスの労働生産性の動きをもたらした、アウトプット=第3次産業活動指数と、インプット=労働投入量の変化を確認してみたいと思います。

 

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 まず労働投入ですが、雇用人数は上昇していますが、平均労働時間が緩やかに低下しています。このため、労働投入量自体は、2012年以降若干減少していましたが、2015年には、大きめの上昇となりました。第3次産業活動指数は、リーマンショック直後の2009年を底に、着実に上昇してきています。

 2011年の特殊な労働生産性の値を脇に置くと、サービスの労働生産性は、リーマンショック時の落ち込みから、2014年まで緩やかに上昇していました。特に、2013年に労働生産性の向上が目立ちますが、これには、第3次産業活動指数(アウトプット)の上昇と労働投入量の低下が影響しています。

 他方、2015年には労働生産性が前年に比べて低下していますが、これは、雇用者数の増加による労働投入量の増加によってもたらされています。つまり、雇用者数が増加した結果、サービス産業の「限界生産性」が低下(限界費用の上昇)したこと示していることになります。

 

サービスの労働生産性の変化を業種別にみると、どのような動きをしているのでしょうか。2010年と2015年の2地点間で比較をしてみました。

 すると、サービス(第3次産業総合)は2.7%の上昇となっており、「金融業,保険業」や「電気・ガス・熱供給・水道業」などが上昇している一方、「不動産業,物品賃貸業」などが低下しています。

 

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 それでは、これらの業種はどういった要因でこのような動きをしているのでしょうか。ここでは、労働生産性を計算する上で分子となる第3次産業活動指数の動きを「活動要因」、分母となる労働投入量(雇用者数×平均労働時間数)を「労働投入要因」として、要因の分析(基準年比に対する両要因の寄与計算)を行いました。

 すると、2010年比で上昇となった「金融業,保険業」と「電気・ガス・熱供給・水道業」では、上昇に至った要因に違いがあることが分かりました。「金融業,保険業」は、活動要因と労働投入要因がともに上昇方向に押し上げていますが、「電気・ガス・熱供給・水道業」は、労働投入要因が大幅に上昇したものの、活動要因が下押ししたため、上昇幅が抑えられています。サービス全体では、活動要因の方が大きかったように見受けられますが、業種別に労働生産性の上昇要因を特定すると違いもあることが分かります。

 

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 他方、労働生産性が低下した業種として「医療, 福祉」が上げられます。その2010年比要因分解をみると、活動要因は労働生産性を大きく上昇させる方向に作用していますが、労働投入要因が大きくマイナス方向に作用しています。

 2014年から2015年にかけては、サービス全体の雇用者数が増加し、労働投入量が増加したことによって、サービス全体の労働生産性が若干低下しましたが、2010年と比較した「医療,福祉」分野においても、この5年間で急激に労働投入量が増加した結果、平均的な労働生産性は低下していたということになります。

 

 改めて、サービス産業の業種別労働生産性要因分解をみると、労働投入量が増えた業種は、概ね労働生産性が低下していることになります。逆に、労働生産性が上昇した業種では、活動要因によって伸びている部分も相当ありますが、概ね労働投入要因も上昇寄与となっています。つまり、労働生産性上昇メリットは、今のところ、活動規模の拡大というよりも、労働投入の削減、つまりコストカットの方に向かっているということが出来るのかも知れません。

 

 なお、サービス産業は、人手を多用する産業というイメージが強いですが、その中でも、設備を相対的に多く用いている業種もあります。第3次産業活動指数では、設備と労働の投入(分配)の違いに応じて、個別系列を「設備型サービス」と「人手型サービス」に分別し、集計した活動指数も毎月作成しています。

この「設備型サービス」と「人手型サービス」についても、その労働生産性の動きを確認してみます。ここでいう「設備型サービス」の労働投入量として定義しているのは、便宜上「電気・ガス・熱供給・水道業」と「情報通信業」を合算したものをいいます。

 

 「設備型サービス」の労働生産性は、2010年から2013年にかけて大きく上昇し、8%も高い状態になっていました。その後、かなり急激に生産性を低下させています。業種別の生産性の動きと対比させてみると、情報通信業の生産性の伸び悩みが響いているものと思われます。

「人手型サービス」の労働生産性は、2011年の特殊な値を脇に置くと、緩やかな上昇から、2012年から2013年にかけて生産性が向上し、その後、ほぼ横ばい圏で推移しています。この結果、両サービスの生産性の基準年から2015年の伸びは3%ほどと同じ程度に落ち着いています。

 「設備型サービス」の急落の背景には、情報通信業労働生産性の動きがあるものと思われますが、情報通信業労働生産性変化の要因分解は、「医療,福祉」と同様に、活動要因は上昇寄与、労働投入要因が低下寄与という形になっています。当該業種全体としては、活動規模の拡大が、設備型サービスでは存在していそうな「規模の経済性」の発露による平均費用の低下、労働生産性の向上につながっていないことになり、意外な結果となっています(エネルギー関係では、活動レベルが低下する中、労働生産性は上昇という逆の結果)。

 

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 いずれにせよ、サービス産業の労働生産性は、ウェイトが大きいこともあり、全産業の労働生産性の動きと似かよった動きだった訳ですが、製造業の労働生産性については、次のブログで検討していこうと思います。

 

 

 

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◎産業全体についてのエントリー   

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

◎製造業についてのエントリー 

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

 

 

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