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経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

各種指数で計測した業種別労働生産性の変化(その1);この5年間で産業全体の労働生産性は3%向上、特に上昇しているのは建設業の労働生産性

 昨今、サービスの生産性に関する話題が改めて注目をあびています。日本の産業界では長らく重要なテーマと位置づけられており、生産性をどのように把握するのかという点についても、様々な議論がなされてきました。

 今回は、経済解析室で作成している全産業活動指数、第3次産業活動指数、鉱工業指数を用いて、簡易的に労働生産性を計測し、その変化を確認してみました。

本分析による労働生産性の算出式は以下のとおりです。

 〇全産業の労働生産性=全産業活動指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 〇サービスの労働生産性=第3次産業活動指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 〇鉱工業の労働生産性鉱工業生産指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 〇建設業の労働生産性=建設業活動指数/(雇用者数×平均労働時間数)

 

 今回の分析における労働生産性の算出で、分子側に用いられる各指数は、その作成段階で数量化、実質化されているため、業種間でのインフレ・デフレを調整する必要がなく、労働生産性を容易に同じ土俵で比較をすることが可能です。また、これらのデータは毎月公表されることから、年単位よりも短いタームでの労働生産性の変化を見ることもできます。

 今回の分析では、労働生産性の水準の違いを検討するのではなく、2005年からの10年間に、どのような変化を見せていたのかを、2010年=100とする労働生産「指数」として表現することで視認性の高いものにすることも目指しています。

 

 それではまず、全産業活動指数を使って、国内全産業の労働生産性の推移を見てみます。

 全産業の労働生産性は、2005年から2008年までは緩やかに上昇していましたが、リーマンショックの影響が出た2009年に急落しました。その後の回復・上昇の後、2013年からは横ばい圏で推移しています(2011年の労働生産性の上昇は、労働データの欠落によるものであり、実際にはこのような上昇は生じていなかった可能性が非常に高い)。ただし、水準はリーマンショック前の水準には届いていません。

 

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 また、全産業の労働生産性を算出する際に用いるデータの動きをみると、アウトプットである全産業活動指数は、2012年以降、4年連続で前年比上昇しているものの、リーマンショック前の水準には届いていません。

 一方、雇用者数は2012年以降上昇傾向ですが、平均労働時間数は低下となっています。この結果、労働生産性を計算する上でインプット(分母)となる労働投入量は、横ばいから微増で推移しています。

 このようにみると、インプットである労働投入、アウトプットである全産業活動指数、そして労働生産性ともに、2012年以降、横ばいから微増となっています。あえて言えば、2012年からの全産業活動指数の微増には、労働生産性の改善が寄与していることになります。

 

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 次に、全産業活動指数を構成する製造業、サービス、建設業の労働生産性は、どのように推移しているのでしょうか。

 サービスの労働生産性は、相対的にリーマンショックの影響は小さかったものの、足下ではそれ以前の水準に戻り切れていません。他方、リーマンショックの影響を最も大きく受けた製造業の労働生産性は、2009年に大きく低下した後、ほぼ元の水準に戻っています。建設業の生産性は2013年に大きく上昇し、リーマンショック前と比べても高い水準が続いています。

 

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 このように、近年、建設業については、際だって労働生産性が上昇していることが分かります。勿論、これは、建設業の労働生産性の水準自体が、他の産業に比べて高いことを意味している訳ではありませんが、2013年以降、建設業がこの10年にない高水準になっていることを示しています。

 

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 この建設業の労働生産性の上昇は、基本的に活動量が大きく増加したことによるものです。

 労働投入自体は2012年まで減少傾向で推移していましたが、2012年には下げ止まり(2011年の労働投入の低下は、東日本大震災によって、データ欠落があることによるもの)、その後は横ばい、あるいはわずかな低下となっています。

 つまり、この2012年以降の建設業活動指数の上昇には、労働投入の変化はほとんど寄与しておらず、労働生産性の改善が寄与していたという計算になります。

 

 全産業の労働生産性は、2010年から2015年で2.6%の改善で、サービスの労働生産性の改善率2.7%とほぼ同じです。全産業活動指数におけるサービスのウェイトは7割を超えていますので、当然と言えば、当然の結果です。他方、製造業の労働生産性の改善率は0.4%に留まっています。この製造業の労働生産性の停滞が、全産業活動指数に占めるウェイトは、6%未満ですが、2010年からの改善率は10%を超えている建設業の伸びが補ったということになります。

 

 ただ、いずれにせよ、全産業活動指数のウェイトの7割を占めるサービスの労働生産性が、2015年に102.7程度に留まっており、これが、せめてリーマンショック前の104台以上に回復していくことが、まずは全体の労働生産性向上を図る上では重要だと言えるかと思います。

 そこで、次のブログでは、この分析フレームを用いて、サービスの労働生産性について、業種別の動きを見ていこうと思います。

 

 

 

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◎サービスについてのエントリー   

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

 ◎製造業についてのエントリー 

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

 

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