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経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

学習塾と外国語会話教室の生産性(その4);外国語会話教室では、構成比において非正規従業員化が進み、正規従業員要因の大幅削減によって、生産性が上昇するという構造が見える。

ミニ経済分析 個人サービス 第3次産業活動指数

 この2つのエントリーでは、学習塾と外国語会話教室の正規従業員ベースの労働生産性の比較を行いました。

 

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 その結果では、学習塾の労働生産性の方が高いという結果になりました。またその労働生産性の変化を「売上高」「労働投入」、そして「単価」「効率性(労働投入1単位当たりの受講者数)」に要因分解すると、学習塾では「効率(量)志向」、外国語会話教室では「価値(質)志向」で生産性を変化させていることが分かりました。

 
 ここで改めて、学習塾と外国語会話教室の従業員の構成の違いを確認してみます。f:id:keizaikaisekiroom:20161004102729p:plain


 学習塾の従業者に占める正社員とその他の従業者(パート、アルバイト等)の構成比では大きな変化はありませんが、外国語会話教室ではその他の従業員の構成比が大幅に増加しています。
 また、専任講師と非常勤講師の構成比をみると、やはり学習塾ではあまり変化は見られません。一方、外国語会話教室では、2005年では専任講師が過半を超えていたのですが、2005年からの10年間で、非常勤講師の構成比が大幅に増加し、過半を占めるようになっています。

 つまり、外国語会話教室で非常勤職員化がこの10年間に大きく進展したことになります。とすると、外国語会話教室の労働生産性を正規従業員ベースで計測するのみでは、実態を見誤ることにつながります。

 そこで、労働時間の違いを考慮するべく、労働生産性の分母となる労働投入量を、(正規従業者数×一般労働者労働時間+非正規従業者×パートタイム労働者労働時間)と設定して、学習塾と外国語会話教室の労働生産性を計測することとします(全従業者ベース)。

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 その結果をみると、元来、パート、アルバイトや非常勤講師への依存が高い学習塾の労働生産性のレベルが大きく低下するため、全従業者ベースでは、学習塾と外国語会話教室の労働生産性には差がなくなり、近時では、むしろ外国語会話教室の労働生産性の方が高くなっています。

 

 そこで、今回は、外国語会話教室の全従業者ベースの労働生産性の要因分解も確認してみます。

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 売上高と労働投入の各要因の寄与をみると、学習塾と異なり、非正規労働投入要因は生産性前年同期比の上昇・低下のどちらの方向にも寄与しておらず、この10年間の労働生産性の変化は、正規労働投入要因の影響が強かったことが分かります。

 特に2007年の生産性の低下からの回復においては、正規労働投入要因が効いており、この時点で正規従業員を大きく削減していたことが分かります(他方で、非正規労働投入が増えているということでもありません)。

 その後の3年ほどは、売上高要因の悪化を正規労働投入要因の改善によってカバーし生産性を維持していました。2015年に入って、売上高要因によって、生産性が上昇する局面となっています。

 

 さらに、全従業員ベースの外国語会話教室の生産性変化を単価要因と効率性要因に要因分解すると、2008年の生産性の回復においては、正規従業員ベースと同様に単価要因が寄与しています。

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 ただ、この2007年末からの1年ほどの期間、正規労働投入は減少しているにもかかわらず、全従業員ベースの効率性要因は低下を続けており、受講者数の低下の割には、非正規労働が低下していないことが推察されます(正規労働から非正規労働への代替)。
 さらに、2008年後半から2010年までの期間の単価要因が悪化する中、生産性が維持されたのは、効率性要因によるものであり、正規労働投入を減らして、効率性を改善していたことが分かります。その後は、単価要因によって、生産性が変動しているようです。
 外国語会話教室の労働生産性を全従業者ベースでみると、2007年の活動レベルの大きな低下、そしてその結果である生産性の低下を、まず正規労働投入を前年同期比で大きく低下させることと、単価要因で回復させました。

 その後、単価要因が悪化しましたが、正規労働投入の削減を継続したため、2008年後半から2010年にかけての生産性は、効率性要因によって維持されました。
とはいえ、この10年を押し並べてみれば、売上高要因、そして特に単価要因によって生産性が変動しています。その意味では、全従業者ベースの労働生産性を確認しても、外国語会話教室はおいては「価値(質)志向」が見られるという基本的性質に差異はありませんでした。

 

 このようにみると、労働集約的なサービスビジネスにおいては、生産要素における人的リソースの影響が大きく、生産性を計測する場合、労働投入をどう定義するかによって、その結果に大きな違いがでる可能性があることが、従業者に占める正規労働と非正規労働の構成に大きな差がある学習塾と外国語会話教室の比較からも明らかとなりました。

 今回の生産性計測の試みでは、労働投入の定義の変化によって、労働生産性の水準や業種間の相対関係に大きな変化が生じましたが、それぞれの労働生産性変化の要因分解においては、決定的な違いは生じませんでした。ただ、外国語会話教室の正規従業員ベースと全従業員ベースの比較では、全従業員ベースにおいて、2007年からの1年間のように、効率性要因の変動マイナス寄与が目立って大きくなる時期もありましたので、ケースによっては、寄与要因が変化することも想定できます。

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 今後とも重要な課題であり続けるであろう「サービスビジネスの労働生産性問題」を論じる場合には、あらためて分母となる労働投入をどのように定義するのが適切なのか、労働生産性を計測、分析する目的に照らして、検討する必要があることを再確認できたものと思います。

 

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◎比較対象となる学習塾についての分析  

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◎ミニ経済分析のページ

学習塾と外国語会話教室の生産性;サービスビジネスの生産性を研究するための試み|その他の研究・分析レポート|経済産業省

 

◎スライドショー 

  

 

◎ミニ経済分析の一覧表

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