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経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

学習塾と外国語会話教室の生産性(その1);話題のサービス生産性につき、典型的な労働集約型サービスである学習塾の労働生産性を確認。その生産性は、「効率志向」で安定推移。

ミニ経済分析 個人サービス 第3次産業活動指数

 サービスビジネスの生産性は、従前より、日本の産業経済にとって重要なテーマでした。昨今、改めて「サービスビジネスの生産性」が話題に上ることが多くなっています。そこで、今回は、典型的な労働集約型のサービスビジネスである「学習塾」と「外国語会話教室」を例に、サービスビジネスの労働生産性の変化には、どのような要素が影響するのかを、第3次産業活動指数や特定サービス産業動態調査などのデータを用いて検証してみたいと思います。

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 まず、今回検討の対象とする「学習塾」と「外国語会話教室」ですが、それぞれの従業員1人当たりの売上高(平成24年 経済センサス活動調査)をみると、学習塾で345万円、外国語会話教室では574万円でした。人が人に教えるというビジネスですので、当然労働集約的な産業な訳ですが、その中でも、とりわけ従業員1人当たりの売上高=労働生産性が低くなっています。

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 さて、この学習塾と外国語会話教室の活動状況を見てみます。

 第3次産業活動指数では、この2つのサービスビジネスの活動レベルをあらわす指数を毎月作成しています。

 年単位の学習塾の活動指数では、この10年以上の期間、あまり大きな変動はなく堅調な推移となっています。一方、年単位の外国語会話教室は2007年、08年と大きく活動指数のレベルを落としています(この時期に生産性も大きく低下します)。その後は、余り大きな変化を見せていません。四半期で、ここ数年の各指数の動きをみると、学習塾、外国語会話教室ともに緩やかな上昇となっています。

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 それでは、学習塾と外国語会話教室の労働生産性の推移について確認してみます。従業員の種別に詳しい、特定サービス産業動態調査を活用して、安定労働力である正社員と専任講師の合計を「正規従業員」とし、これを分母とする労働生産性(正規従業員ベース)をグラフ化します。

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 このグラフみると、学習塾と外国語会話教室の生産性には大きな違いがあることが分かります。

 活動指数の推移が相対的に安定していた学習塾の労働生産性のこの10年ほどの平均値は、外国語会話教室の平均値の約1.5倍の水準です。また、活動指数が大きく低下外国語会話教室の労働生産の動きに比べて、学習塾の労働生産性は、やはり安定した推移となっています。

 

 こういった学習塾の安定した労働生産性の動きの背景には、何があるのでしょうか。

 労働生産性の動きを分析するために、その変動を「売上」と「労働投入」の変化に要因分解してみます。さらに、「売上」は、単価と受講者数の積な訳ですが、労働投入1単位当たりの受講者数を「効率性」と定義すると、労働生産性は、単価、つまり需要側にとっての価値の変化と、供給側の効率性の変化に要因分解できることになります。

 なお、売上高と単価については、一般物価水準(インフレやデフレ)の影響を除去するため、消費者物価指数(総合)で除したものを利用します。

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 学習塾の四半期単位の労働生産性の前年同期比を、売上高と労働投入に要因分解してみます。ここでは、労働投入は正規従業員ベースで測定しました。

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 こうみると、学習塾の労働生産性の前年同期比は、ほとんどの期間、±2%の範囲内に収まっており、その変化は小さなものとなっています。

 2011年までは、売上高要因による生産性上昇を労働投入要因による生産性低下が相殺していました。つまり、売上高は伸びているのだが、労働投入=正規従業員を前年同期よりも増やしているので、生産性がそれ程伸びないという状態でした。

 2013年から翌年にかけては、逆に、売上高要因による生産性低下を、労働投入量を削減することで、生産性を補っていました。2015年以降は、労働投入を増やすことなく、売上高が伸びて、生産性を向上させています。

 

 

 学習塾の生産性の変化を、単価と効率性に要因分解してみます。

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 これでみると、2006年以降の学習塾の生産性変化の要因は、2010年を境に大きく変化しています。

 前半は、効率性要因が悪化していたものの、単価要因がプラスに作用して生産性を引き上げていました。つまり、学習塾の需要側が高い単価を許容していたため生産性が維持されていました。

 後半は一転、単価は前年同期比で低下することが多くなり、効率性要因の改善により、生産性が上昇していました。

 

各要因分解のグラフを比較すると

 ・学習塾の生産性上昇は売上高要因(オレンジ部分)によるところが大きい

 ・学習塾の生産性変化は効率性要因(青部分)によるところが大きい

ということが分かります。

 

 学習塾では、労働投入当たりの受講者数を増やし、売上高を増やして労働生産性を上昇させるという「効率志向(量志向)」になっているということがわかりました。

 

 

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◎比較対象となる外国語会話教室についての分析  

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

 

 

◎ミニ経済分析のページ

学習塾と外国語会話教室の生産性;サービスビジネスの生産性を研究するための試み|その他の研究・分析レポート|経済産業省

 

◎スライドショー 

  

 

◎ミニ経済分析の一覧表

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