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経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

戦後2回目の縮小均衡プロセスにある生産能力指数を機械工業と機械工業以外で比較してみました。

ひと言解説 生産能力指数

 経済産業省が公表している生産能力指数は、「事業所が保有する生産設備でどれだけの生産が可能か」を表すものです。今回は、オイルショック後の調整末期にあたる1983 年からの比較的長期の推移を、製造工業の約6割を占める機械工業と、残り約4割にあたる機械工業以外の製造工業(以下、「機械工業以外」)とに分けて見てみました。

 まずは時系列の動きを見てみましょう。

 下のグラフの通り、機械工業の生産能力指数は、1992年頃までは一貫して上昇しているのですが、バブル景気の崩壊とともに横ばいとなり、金融機関の破綻が相次いだ1997年後半からは低下を始めました。2004年には一旦底をついて上昇を始めましたが、リーマン・ショックを契機に再び低下に転じています。2015年後半からは横ばいとなり、底入れの気配も感じますが、最新データである2016年第1四半期の水準はリーマン・ショック以前に及びません(95.8)。

 これに対して、機械工業以外は、機械工業より高い水準からではあるものの、1997年頃からほぼ一貫して低下傾向を辿っているのが特徴です(同93.4)。

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 次に、データが入手可能な1999年以降について、業種別の前年比寄与率の推移を、特に低下側に注目して見てみましょう(下グラフ参照)。

 機械工業で、(上昇側ではなく)主に低下側に寄与している業種は、自動車等の輸送機械(特に2001~2002年前半と2014年)、薄型テレビ、デジタルカメラ、パソコン等の情報通信機械(2002年後半~2003年と2012年)、家電等の電気機械(ほぼ通期)です。

 輸送機械は、生産能力指数の機械工業に占めるウェイトが大きいため(37%)寄与も大きくなりやすいですが、情報通信機械はウェイト(同12%)の割に生産能力の縮小が進んでいると言えるかもしれません。また、電機機械(同11%)もほとんどの期間について低下側に寄与しており、生産能力縮小が進められているようです。

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 上下のグラフの縦軸の目盛りの違いを見ると分かりますが、機械工業以外については、全体の前年比低下幅が小さいと同時に、各業種の寄与率も総じて小さくなっています。また、機械工業における電子部品・デバイス工業のように生産能力を大きく上昇させた業種もなく、ほとんどの業種が低下に寄与してきました(下グラフ参照)。その中で目立つのは繊維工業ですが、2014年以降は石油・石炭製品と化学の寄与が大きくなっています。

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 生産能力の構成要素は、資本(生産設備)と労働です。特に石油化学業界では過剰設備の処理が課題に挙げられていることもあり*、生産能力の縮小と聞けば生産設備の整理を思い浮かべがちですが、実は、日本の製造業の生産能力は、どちらかといえば労働に依存しているようです(「目下の日本の製造業では、資本ストックと生産能力の変化がかい離しています」)

 上で挙げた業種においても、縮小均衡プロセスの中で、国内生産設備の集約の他に、合理化や省力化と併せた労働力の削減が進められてきたのではないかと想像されます。

 いずれにせよ、日本の製造工業の生産能力は、戦後2度目の縮小プロセスから抜けだせずにいる状態です。海外現地子会社からの出荷が、全出荷量に占める割合も3割を超えている昨今、日本国内の製造工業生産能力が再び上昇プロセスに回帰することを期待して止みません。

* 「石油便覧」6編1章2節、JXエネルギー株式会社

 

 

 

◎ひと言解説の一覧表

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