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経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

中国の現地法人では、明らかに「現地化、地場化」が進展。ASEAN4やNIEs3では、広義の日系調達の構成比が高い。NIEs3の現地法人の調達行動においては、脱アジア=日本回帰と多国籍化が見られる。

ミニ経済分析 グローバル化 グローバル出荷指数

 日系製造業の海外現地法人の活動のデータを概観してみると、中国立地の現地法人の法人数や売上高などにおいて「環太平洋化」、つまり、中国の存在感が急激に高まるとともに、北米における現地法人の活動水準が高い状態も持続しており、他方、明らかに欧州に立地する現地法人の存在感が低下するという現象が起きていたことが分かります。

 

 そこで、急速に存在感を増している中国に立地する現地法人を含む、アジアとして、中国、ASEAN4、NIEs3に立地する製造業現地法人の部品等の調達行動が、平成13年度(2001年度)以降、どのように推移してきたのか、構成比の変化という形で検討してみたいと思います。

 

 まず、中国に立地する現地法人の調達先の構成比が、どのように変化してきたのかを確認します。平成26年度の日本、現地、第三国からの調達比率をみると、すでに3分の2が中国現地からの調達となっています。平成13年度との比較では、現地調達の構成比が2割ほど増加し、日本、第三国からの調達は構成比をともに下げています。やはり、中国における日系子会社の調達においては、確かに「現地化」は進んでいるようです。

 

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 この中国の現地法人の調達の14%ほどを占める第三国調達の大部分は、アジア地域からのもので、アジア・ワイドのサプライチェーンの存在を示唆するもの思われます。また、平成13年度との比較では、1割弱あった北米からの調達がほとんどなくなりつつあるのが目立った変化でした。

 

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 さらに、現地調達の内訳構成比では、地場企業からの調達が3分の2ですが、実は、日系企業からの調達が約3割あります。全調達額に対する構成比で比較すると、中国地場企業からが約42%、日系企業と日本からの輸入を合計した「広義の日系」が約41%で、調達の「現地化」とは言っても、その内容を精査すると、現地調達増加の背景には、日系サプライヤーの進出が確認できます。日系子会社の調達では、現地と日系とは平成26年度段階では、拮抗していたようです。

 

 

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 次にASEAN4の現地法人の調達の内訳構成比を確認していきたいと思います。

 平成26年度の全調達額のうち、6割が現地調達となっています。現地調達比率の推移は、平成19年度には既に6割に達していましたが、その後構成比が上昇していません。このような現地調達比率の動きは、北米立地の海外子会社の調達行動と類似しています。日系海外現地法人の設立時期が相対的に早い地域における調達行動の傾向なのかもしれません。ただし、その中でも、日本からの調達が、第三国調達にあまり置き換わっていないことが、北米の現地法人の調達と多少異なるところです。

 

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 ASEAN4の現地法人の第三国調達は全体の2割弱を占め、一時期より多少は増加しています。この第三国調達の大部分は、アジア地域からのものです。中国の海外子会社の第三国調達からも示唆されたように、やはり中国を含むアジア・ワイドのサプライチェーンの存在を示唆されます。欧州からの調達は元々少ないので大きな変化はりませんが、北米からの調達については、一時的に構成比を増やしていたのですが、平成23年度からはその調達比率の低下が目立っていました。

 

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 ASEAN4の海外子会社の現地調達の内訳構成比では、地場企業からの調達が約5割と、他の地域と比べて低く、かつ足元で比率が低下しているのが特徴的です。全調達額の中の構成比で比較すると、地場(立地国内)企業からの調達は3割を割り込んでおり、日系企業と日本からの輸入を合計した「広義の日系」が約44%と、地場企業からの調達をかなり上回っています。同時に、「その他の企業」、つまり現地の外資系企業からの調達比率も上昇しています。あえて言えば、中国に比べると地場のサポーティング・インダストリーの成長がまだまだということなのかもしれません。

 

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 アジアの最後として、NIEs3の現地法人の調達行動を見てみます。

 NIEs3の現地法人の調達では、現地調達の比率が欧州のそれに次いで低く、かつ、日本からの調達比率が恒常的に4割近くに留まっていることが特徴です。また、第三国からの調達が、足元で寧ろ増加し、現地調達に置き換わっているように見受けられます。他のアジア地域では、「現地化」が進展していることとの大きな違いです。ちなみに、現地調達比率が低下している地域は、NIEs3以外では欧州です。

 

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 その増加しているNIEs3の現地法人の第三国調達では、アジアからの調達比率が大きく低下し、その分が欧米ではなく、「その他の地域」からの調達に置き換わるという、他の地域とは大きく異なる特徴を見せています。現地調達の構成比が低下していることと併せて考えると、NIEs3の日系海外子会社の調達においては、「脱アジア現象」が見られるということになります。

 

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 さらに、NIEs3の海外子会社の現地調達の内訳構成比では、地場企業からの調達が6割ありますが、平成23年度との比較ではその比率が低下しています。その分は、日系企業からの調達比率が上昇しています。全調達額の構成比で比較すると、地場企業からの調達は3割を割り込んでおり、日系企業と日本からの輸入を合計した「広義の日系」調達が5割を超えています。NIEs3の日系現地法人の調達行動では「日本回帰」が見られるようです。

 NIEs3の現地法人の調達行動においては、現地化が進まず、脱アジア=「日本回帰、第三国への多様化の併存」という特徴が見えます。

 

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 まとめると、中国の現地法人では、明らかに「現地化、地場化」が進展しています。他方、ASEAN4やNIEs3では、広義の日系調達の構成比が意外にも高い状態が続いています。特に、NIEs3の現地法人の調達行動においては、脱アジア=日本回帰と多国籍化が見られるようです。必ずしも、アジア地域における日系海外子会社の調達行動については、現地化一辺倒ではない動きが見られました。

 

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 では、稿を改めて、北米と欧州の海外現地法人の調達行動について、比較してみたいと思います。

 

 

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◎ミニ経済分析のページ

海外子会社の立地場所によって、材料や部品の調達先に違いは生じているのか?;海外現地法人の調達行動を立地地域別に把握する試み|その他の研究・分析レポート|経済産業省

 

◎スライドショー 

 

 

◎最新のグローバル出荷指数についてのまとめ 

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

◎ミニ経済分析の一覧表

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