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経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

日本製造業の海外展開では、「環太平洋化」が進展。北米と中国における現地法人の活動が大きなウェイトを占めている。北米ではリーマンショック前の水準を超える活動水準となっており、中国は東日本大震災後に法人数等が大きく伸びている。

 今世紀に入って、日本の製造業のグローバル化も進み、日本企業の出荷のうち3割が海外拠点(海外現地法人)からのものとなっています。また、それらの出荷先についても4割が海外市場となっています。同時に、日本から輸出量の5割以上が、生産財となっており、前世紀に家電製品などの完成品を世界中に輸出した様とは大きく変化しています。

 それゆえ、日系海外現地法人の調達行動が変化すると、日本の貿易にも大きな影響が出るのではないかと想像されます。そこで、日系製造業海外現地法人の調達行動について整理してみました。

 総じて見ると、日系製造業の海外現地法人の調達行動の基本は「現地調達」で、調達全体の過半を占めており、日本からの調達は、今世紀の初めには4割ほどでしたが、平成26年度には4分の1程の構成比に低下しています。ここ近年(第2の転換点後)の調達先の変化においては、現地調達というよりは、第三国からの調達が増えています。さらに、現地調達においても、地場企業でも日系企業でもない第三国の外資系企業からの調達がじわりと増えており、海外現地法人の調達先の多様化が見られます(地理配置、企業国籍の両面での「第三国化」)。

 そこで、さらに、このような海外現地法人の平均的な調達行動とは別に、この調達行動に地域別の違いがあるのか確認してみることにしました。

 

 まず、現地法人の調達行動の分析の前提として、日本からの仕向け先別の出荷の動きについて確認してみたいと思います。

 最初に目に付くのが、欧州・米国向け出荷がリーマンショック時に大きく落ち込んでいることです。平成27年度でも、欧州向け、米国向け出荷の水準は、リーマンショック以前の水準に戻っていません。他方、中国向け出荷は、平成13年度(2001年度)から長いスパンで上昇は続いており、その水準は今世紀初めから倍増です。また、ASEANNIES(台湾、韓国)向けも安定した推移を見せています。ただし、平成24年度以降、他の地域向け出荷が横ばい又は若干の低下で推移している中、足元では、米国、ASEAN向け出荷が上昇していることも確かです。

 

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 では次に海外現地法人の出荷動向を主要地域別に見てみます。

 海外現地法人の出荷量をその立地地域別に集計した「海外出荷指数」では、北米地域の指数が特に上昇しており、リーマンショック前の水準を大きく凌駕しています。日本からの米国向け出荷が、ここ数年上向いているとはいえ、リーマンショック前の水準に回復できていないこととは大きく異なっています。中国、ASEANの海外現地法人の活動も長期的には上昇傾向ですが、ここ2年ほどの指数の動きは横ばいとなっています。他方、欧州に立地している海外現地法人からの出荷は、リーマンショック時の落ち込みから回復できていない状態です。こうみると、日系製造業の海外現地法人からの出荷である「海外出荷指数」全体のけん引役は北米の現地法人の活動ということになります。

 

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 長期的にみると、日本からの輸出向け出荷においては「アジア化」が進展し、海外拠点からの出荷においても「アジア化」が進んでいますが、北米地域の活発化が著しく、あえて言えば「環太平洋化(日本プロ野球ではないですが、パシフィック化)」が進展していました。

 

 では、製造業海外現地法人の法人数や売上高といった数値を地域別に確認したいと思います。

 製造業海外現地法人数は、平成13年度末に6500法人余りだったものが、平成26年度末には10600法人と、法人数で6割の増加です。この法人数が大きく変化したのは、東日本大震災(とタイの洪水)の翌年である平成24年度でした。この年に前年度末から1741法人の増加が見られました。その増加分の多くは、中国に設立された法人の増加でその数は923法人、全体の増分の5割以上を占めていました。それに次ぐのは、ASEAN4における380法人の増加でした。平成13年度の段階では、中国とほぼ同じ数であった北米の現地法人数が、リーマンショックを挟んで低下していることと好対照です。

 また、最近の動きとしては、平成26年度にASEAN4と「その他の地域」以外では、法人数が低下していることが目立ちます。

 

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 この現地法人数の地域別構成を、平成13年度(2001年度)と平成26年度で比較すると、中国の海外現地法人の構成比が、2割から4割に倍増しています。その分、北米の構成比が2割から1割に低下しているほか、欧州の構成比が半減、NIESの構成比も低下しています。ただ、ASEANはその構成比をほとんど変化させていません。

 海外現地法人の「数」という面では、「アジア化」というよりは「中国化」、そして脱欧米化という面が見えるかと思います。

 

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 さて、海外現地法人の売上高は、平成13年度から平成26年度にかけてほぼ2倍(64兆円→130兆円)に増加しています。中国の現地法人の売上高が約6倍、ASEAN4で約3倍、NIES 3で約2倍と、アジアに立地する現地法人の売上高がやはり伸びている状況です。ただ、地域別の売上高の金額を比較すると、北米現地法人の売上高が34兆円弱と最も多い金額を見せていることは、平成13年度当時から変わりません。

 

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 海外現地法人の売上高の立地地域別構成では、平成26年度の中国の構成比が24%で、法人数の構成比よりも小さくなっています。平成13年度との比較では、4割あった北米の構成比が平成26年度に26%に低下(ただし、北米の法人数の構成比は1割)してはいますが、しかし、売上高では北米がトップシェアであることは変わりません。北米の現地法人は一法人当たりの売上が大きいということになります。

 

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 最後に、海外現地法人の調達額の推移を確認します。海外現地法人の調達額は、平成13年度から平成26年度にかけてほぼ2倍(44兆円→85兆円)となっており、売上高と同じような動きとなっています。中国の現地法人の調達額が約6倍、ASEAN4で約2.5倍、NIES 3で約2倍と、アジアに立地する現地法人の調達額がやはり伸びていますが、それぞれ売上高の伸び率よりも若干低い動きとなっています。法人数は1.6倍で、調達額より売上高の伸びが大きいということは、海外現地法人の1法人当たり付加価値生産が多くなっているということを意味します。

 

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 海外現地法人の調達額の立地地域別構成比では、北米と中国が4分の1ずつを占め、それに5分の1のASEAN4が続き、1割弱のNIEs3が続くという構造で、これが平成23年度から変わらない状態です。リーマンショック前で4~3割あった北米の構成を中国が代替している(一部ASEAN4の構成比増分もあり)ようです。また、欧州現地法人の調達額の構成比は、平成13年度からは半減という状態です。平成13年度には、6割以上あった欧米現地法人の調達の構成比が3割強に低下し、平成26年度では調達額の5割以上がアジアの現地法人のものとなっています。

 

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 日本製造業との取引関連で言えば、欧州との関係の希薄化が顕著で、現地法人の活動面でもウェイトがほぼ半減しています。アジアについては、中国の重みが格段に増加しており、ASEAN4はそれ程ではありませんが、NIEs3のウェイトが低下しています。北米については、現地法人数では、中国に水を開けられていますが、売上高では、かろうじてトップシェアを維持しています。ヨーロッパの存在感が低下しているという意味で、日系製造業の海外現地法人の活動において「環太平洋化」といった現象が生じているように思えます。

 

 では、稿を改めて、海外現地法人の調達行動について、アジア内の各地域で比較してみたいと思います。

 

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◎ミニ経済分析のページ

海外子会社の立地場所によって、材料や部品の調達先に違いは生じているのか?;海外現地法人の調達行動を立地地域別に把握する試み|その他の研究・分析レポート|経済産業省

 

◎スライドショー 

 

 

◎最新のグローバル出荷指数についてのまとめ 

keizaikaisekiroom.hatenablog.com

 

 

◎ミニ経済分析の一覧表

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