経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

平成28年5月速報では、鉱工業生産が前月比マイナス2.3%と大幅低下。工場生産で利用される化学原料や部品類の生産が、業種の枠を超えて広く低下。4月生産好調だった化粧品類やエアコンの生産も大きく低下。

 平成28年5月の「生産」は、季節調整済指数95.0、前月比マイナス2.3%低下と3か月ぶりの前月比低下となりました。鉱工業生産の前月比プラスは、2か月連続で途切れ、かつ低下幅も大きめとなりました。
 前回調査の段階では5月の生産は前月比横ばい程度を見込んでいましたが、この見込みと実績のかい離幅もマイナス2.5%でした。5月の鉱工業生産は、「想定外」に下振れしたことになります。f:id:keizaikaisekiroom:20160630103323j:plain

 指数値95.0というのは、さすがに普通乗用車の計画減産が行われた今年2月の指数値よりは高いのですが、昨年で最も生産指数の値が低かった12月の95.9を下回ることとなりました。この5月の生産指数は、消費増税後2番目に低い値で、今年2月を除くと平成25年6月以来の低さです。この平成25年6月も輸送機械工業の低下を中心に前月比で大きく低下したのですが、翌月には水準を戻していました。今年の5月についても是非、来月には戻して欲しいものです。

 4月と5月の指数平均が96.1で、丁度今年の第1四半期の生産指数と同じであり、来月6月にそれなりの上昇を見せないと、鉱工業生産が2四半期連続で前期比マイナスとなってしまうことになります。

 

 5月の鉱工業生産を業種別にみると、速報時15業種のうち、4業種が前月比上昇で、残り11業種が前月比低下で、3分の2の業種で生産が前月比低下となりました。
 低下業種においては、化学工業(医薬品を除く)の低下寄与が非常に大きくなっており、低下寄与2位の「はん用・生産用・業務用機械工業」の2倍を超える生産押し下げ要因となっていました。

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 この化学工業における前月比マイナス7.5%生産低下の要因となったのは、最下流の化粧品類と比較的上流の有機薬品でした。化粧品類については、4月に夏季用新製品の生産、出荷が好調で、4月の生産上昇寄与トップでしたが、その反動が5月に出たようです。有機薬品類については、定期修理が5月に実施されたもので、予定通りの減産となります(5月調査の化学工業の前月比見込みはマイナス3.5%低下で、実現率もマイナス0.6%)。

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 化学工業に次いで鉱工業生産を押し下げたのが、「はん用・生産用・業務用機械工業」、電子部品・デバイス工業、電気機械工業の3業種となります。
 「はん用・生産用・業務用機械工業」においては、4月に上昇品目であったショベル系掘削機械や反応用機器などが低下寄与品目となっています。実は、「はん用・生産用・業務用機械工業」では、生産が前月比で大きく上昇しているものがほとんどなく、ほぼ唯一半導体製造装置が前月比で生産を非常に大きく上昇させていました。この半導体製造装置の上昇分を除外すると、「はん用・生産用・業務用機械工業」の低下寄与は、化学工業を超えてしまいます。
5月見込みからの低下幅である実現率もマイナス7.2%と比較的大きめとなっており、かつ予測修正率もマイナス3.3%低下ということで、納期が後ズレしているというだけでなく、5月は生産が純粋に低下していたようです(受注型ではない、生産財に格付けされている品目が多数低下していることからも分かる)。
 
 電子部品・デバイス工業については、モス型半導体集積回路のメモリ用が大きく低下するとともに、太陽電池セルも前月比低下寄与が大きくなっています。太陽電池セルについては、電気機械工業において太陽電池モジュールが低下しているので、その部品が低下ということになります。
 さて、半導体メモリですが、従来この品目の動きはスマートフォン向けということで、中小型の液晶素子と同じような動きをしていたのですが、4月もそうでしたが、この両者の動きが異なるようになっています。中小型の液晶の生産は昨年のレベルからは3割程低下しているものの、5月は前月比上昇していました。ここ1、2年は、電子部品・デバイス工業については、スマホ向け供給で動いていたところですが、少し様相が変わってきているようです。

 電気機械工業についても、4月の上昇寄与が最も大きい品目であったセパレート形エアコンの生産低下寄与が5月に非常に大きくなっています。これも夏季需要期に向けた生産が4月に盛り上がりましたが、その水準が非常に4月としては高かったことから、5月は前月比で大きな低下となりました。これは、化学工業の化粧品類と同じような関係かと思います。

 

 需要先別分類の財別分類で鉱工業生産をみると、「はん用・生産用・業務用機械工業」が落ちていることから、設備投資に用いられる財の生産が悪くなっているという印象を受けるかもしれません。
 しかし、5月の(輸送機械を除く)資本財の生産は、前月比0.8%上昇と伸び幅は小さくなってはいますが、3か月連続で上昇が続いています。指数値も109.0と今年に入って最高値となっているので、設備投資に関連する資本財の生産が悪い訳ではありません。輸送機械を含む資本財の生産では、前月比1.3%上昇とこちらも3か月連続の上昇でした。

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 ただ、資本財の予測誤りである実現率がマイナス7.7%と大きいことから、5月の鉱工業生産の想定外の下振れ要因として、(輸送機械を除く)資本財の生産実績が、4月の生産実績との比較ではなくて、5月の見込み値から大きく下振れしたということはあると思います。

 

 5月の鉱工業生産を引き下げているのは、主として生産財、それも鉱工業用生産財であり、主に化学工業、電子部品・デバイス工業、そしてはん用・生産用・業務用機械工業(軸受、空気圧シリンダ、はん用内燃機関、空気圧バルブ、油圧モーター、超硬工具)の生産財、つまり機械部品や化学原料の類の生産が押し下げ要因になっていました。

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 5月の鉱工業生産の低下は、特定の業種というよりは、生産財が幅広く低下していたということのように思います。

 

 

◎結果概要のページ

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