経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

海外子会社では、立地域内で販売も調達も行うことが基本で、域内販売、域内調達の構成比が高い。同時に、どの地域の海外子会社の活動においても、アジアとの取引の存在感は増し、日本との取引の存在感が小さくなっている。

 海外現地法人の活動が、日本の貿易収支に、どのような影響を及ぼしてきたかをグラフ化して分かることは、やはり海外現地法人の事業活動の構造は「海外から調達して、海外に販売」であり、近年その傾向に拍車がかかっているということでした。

 また、海外現地法人の日本からの調達の存在感は、海外現地法人側から見ても、日本側から見ても「3割」という結果です。

 

 こういった海外現地法人の事業活動の変化が、単なる「現地化」なのか、それとも現地化とは異なる「グローバル化」なのかを確認するべく、海外現地法人の販売と調達の「グローバルな分布」をビジュアル化してみたいと思います。具体的には、海外現地法人の立地地域を「アジア」「北米」「欧州」の3地域に分け、その地域間での現地法人の取引を「三角図」にしてみました。なお、この「三角図」は、あくまで海外現地法人の活動のビジュアル化を目指しているので、日本から3地域への輸出は描かれていません。

 

 まず、販売先のグローバルな分布が、平成21年度から平成26年度にかけて、どのように変化したのかを検討します。

f:id:keizaikaisekiroom:20160617144829p:plain

 

 一見して分かるのが、この5年間で、アジアの海外子会社の売上高が存在感を増していることです。北米の海外子会社の売上高も5割以上増加していますが、アジアの海外子会社の売上高は7割増となっています。

 そのアジアの海外子会社の売上高の8割は、実は域内向けの販売で、日本向け販売はその4分の1以下(平成26年度16.9%)で、その状況は5年前からほとんど変わっていません。また、アジアの海外子会社の欧州、北米向け販売の構成は、格段に小さくなっています。実は、アジアの海外子会社の活動は、「輸出基地」ではなくて、アジア域内消費向けの出荷拠点としての活動が主であり、日本向け販売が従たる活動として存在しているという構造だったことになります。

 北米や欧州の海外子会社の販売先も、ほとんどが域内需要であることは当然で、その構成比は5年前から9割以上となっていました。また、北米の海外子会社の販売先構成比(平成26年度)では、日本向けが多少高く、欧州向け、アジア向けがその半分程度の構成となっています。欧州の海外子会社の販売先構成比(平成26年度)では、北米向けが高く、日本向けとアジア向けが同程度の構成比となっています。共通しているのは、北米、欧州の海外子会社の販売先構成比において、アジアの構成比が着実に上昇しており、欧米地域に立地する日系製造業の海外子会社にとっては、日本市場よりもアジア市場の重要性が高いという時期が来るのかもしれません。

f:id:keizaikaisekiroom:20160617161949p:plain

 いずれにせよ、アジアが欧米市場向けの輸出基地、欧米は地産地消というイメージがありますが、実際には、日本向けの販売の構成比に違いがありますが、域内需要に向けた地産地消が海外子会社のビジネスの基本であることが分かります。

 

 次に、調達先のグローバルな分布が、この5年間に、どのように変化したのかを検討します。

f:id:keizaikaisekiroom:20160617145138p:plain

 

 こちらについても、一見して分かるのは、アジアの海外子会社の調達額が、他の地域に立地する海外子会社の調達に比べて増加度合いが大きいということです。

 そのアジアの海外子会社の調達においては、欧米地域からの調達の構成比が合計しても1%を下回っており、日本からとアジア域内からの調達が99%を占めています。そのアジア域内からの調達は、この5年間で72.6%ら75.9%へ上昇しており、調達先が日本からアジア域内に少しずつシフトしています。

 北米の海外子会社の調達額の変化では、北米の売上高の伸びほどの増加が見られず、アジアの海外子会社の売上高8割増し、調達額6割増しとなったことと、少し異なる様相を見せています。アジアから北米への売上高が8割増加で、全体の7割増よりも高い率で増加していることと併せて考えると、北米の海外子会社の売上高と調達額の伸びの違いからは、北米における海外生産において付加価値の高い生産へのシフトが生じており、付加価値の低い財の生産が北米からアジアにシフトしていたのではないかと考えられます。

 さて、北米の海外子会社の調達先の構成比では、域内割合がほぼ7割で推移しており、日本からの調達が4分の1、アジアからの調達が5%まで行かないという状態です。ここでも、日本からの調達割合がこの5年間で少し低下しています。

 欧州の海外子会社の調達の構成比も、北米の海外子会社のものとほぼ同様に構造ではありますが、この5年間で日本からの調達の構成比の低下、そして欧州域内からの調達の構成比の上昇がより目立つとは言えるかと思います。

f:id:keizaikaisekiroom:20160617162339p:plain

 

 日系製造業の海外子会社の販売・調達のグローバルな分布を見てきましたが、どの地域の海外子会社のビジネスでも地産地消が基本であって、他地域への「輸出基地」的な意味合いは余りないということが確認できました。

 ただ、やはりアジアの海外子会社は日本向けの販売が、2割未満ではありますが、「残存」していることが他地域との比較では特徴です。ただ、その構成比も5年前から低下しており、この特徴がいつまで維持されるのかは不分明です。

 調達のグローバルな分布をみると、アジアの海外子会社は域内調達が8割弱、欧米の海外子会社は7割弱ということで、アジアと欧米で若干の違いはありますが、現地調達が中心という点は共通しているかと思います。日本からの調達の構成比は、平成26年度ではどの地域でも4分の1程度で、この5年間で確実に低下しています(欧州の海外子会社における低下が少し目立つ)。

 いずれにせよ、日本と域内以外の他地域への販売、他地域からの調達の構成比は小さく、日系製造業の海外子会社にとっては、日本と立地地域のビジネス上の重要性が高いのですが、それでもこの5年間でアジアの海外子会社の存在感が着実に日本の分を浸食していることも確かかと思います。

 その意味では、 海外現地法人の事業の「現地化」が進んでいるのですが、その中でも「アジア化」(日本の希薄化)というグローバルな現象が生じていると言えるかもしれません。

 

 では、稿を改めて、海外現地法人全体の調達行動が、調達先の属性が平成13年度からどのように変化してきたいのかを検討してみたいと思います。

 

 

f:id:keizaikaisekiroom:20160617142744p:plain

 

 

 

◎ミニ経済分析のページ

日系製造業の海外子会社は、どこから部品や材料を調達しており、それはどのように変化してきたのか?;海外現地法人の調達行動の定量的、時系列的把握|その他の研究・分析レポート|経済産業省

 

◎スライドショー 

  

 

第45回海外事業活動基本調査結果概要-平成26(2014)年度実績-|海外事業活動基本調査|経済産業省

 

◎ミニ経済分析の一覧表

f:id:keizaikaisekiroom:20160212181140p:plain