経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

鉱工業生産は、化粧品類の生産などが好調で、前月比0.3%上昇。熊本地震の影響は普通乗用車の生産減少には顕著に表れたが、日本全体の鉱工業生産への影響は幸いにも限定的だった。

 平成28年4月の「生産」は,季節調整済指数97.0,前月比0.3%上昇と2か月連続の前月比上昇となりました。平成28年熊本地震発生後、最初の鉱工業生産のデータであり、地震の影響で、前月比マイナスとなることも懸念されました。しかし幸いにも、小幅ではありますが、前月比プラスとなりました。

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 ただ、5月に実施した生産予測調査では、前回調査における4月見込み値と、4月実績とのかい離である実現率がマイナス5.9%と、大きく低下していますし、4月初旬段階の補正予測値は前月比0.8%上昇でしたので、やはり「想定外」の事象によって、4月の生産量が引き下げられたことを示しています。

 

 指数値97.0というのは、丁度昨年の9月あるいは第3四半期の値です。また、4月の前年同月比をみると、マイナス3.5%低下となっています。

 これらのデータからすると、2月の計画減産などの影響で前期比マイナスとなった第1四半期ほどではないにせよ、まだ生産水準自体は低い水準と言わざるを得ないところです。

 

 4月の鉱工業生産を業種別にみると、速報時15業種のうち、7業種が前月比上昇、7業種が前月比低下で、「その他工業」が前月比横ばいでした。前月からの伸びが小幅であったので、上昇業種と低下業種が拮抗しています。

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 上昇寄与が大きかった化学工業では、化粧品類の生産が好調でした。そもそも夏向けの新製品の投入時期であるとともに、4月の気温が高かったことから、その出足が早かったようで、化粧品類の国内向け出荷(輸出もプラスのようですが)が好調で(化粧品の出荷全体は、前月比18.1%上昇)、その生産上昇が目立ちました。

 また、需要期に向かって生産を増やしているセパレート形エアコン(というのも、4月の出荷は前月比マイナス6.4%低下で増えておらず、在庫も前月比では低下だが、前年同月比ではかなり上昇)や、ともにここ2、3か月生産が低調だった電力変換装置や医用X線装置の生産増によって、電気機械工業も、順番をつければ生産上昇上位業種です。

 

 とはいえ、それぞれの業種や品目の生産上昇への寄与には、突出して大きいものはなく、上昇業種の品目がそれぞれ少しずつ伸びていたという結果です。

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 翻って、4月の生産低下業種を見てみると、まず最も生産低下への影響が大きかったのは、金属製品工業です。金属製品工業の生産低下は、3月に生産量が多かった橋りょうの生産が大きく低下したためで、これは製品の性格上想定された反動減です。

 その次に影響が大きかったのは、輸送機械工業で、特に普通乗用車です。

 熊本地震で自動車部品メーカーが被災し、普通乗用車の生産が2月に続いて生産を一部停止することとなりましたが、その影響が如実に表れ、普通乗用車の生産は前月比マイナス3.7%低下でした。普通乗用車の生産は、事故や災害のためになかなか本調子になれていません。

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 とはいえ、3月末に存在していた船待ち在庫の解消と生産減少のため、普通乗用車の在庫は前月比マイナス22.9%低下となり、3月末には、若干懸念材料となった輸送機械工業の在庫は大きく改善しており、この在庫面での低下圧力は軽減しました。

 なお、乗用車の車種別の状況では、小型乗用車の生産は、前月比3.1%上昇ですが、軽乗用車の生産は、前月比マイナス9.9%低下となっており、乗用車の中でも車種ごとに明暗が分かれています。

 

 さらに、生産の先行きをみると、平成28年5月の見込み値は、予測調査の結果そのものでは前月比2.2%上昇となります。

 確かに5月の前月比は上昇しているのですが、そもそも、前回調査における5月予測はマイナス予測で、かつ、新しい5月の予測値自体は前回調査よりもマイナス1.5%低下しているので、この5月の上昇は4月の実績が見込みより落ち込んだための見かけ上という面が強く、あまり高評価することはできません。

 また、この調査結果に含まれる傾向的な過大見込み分の修正をかけた試算では、5月の生産の、最も可能性の高い前月比は横ばいという計算結果になっており、この面からしても、5月見込みついて高評価はできません。

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 よって、確かに3月、4月と鉱工業生産は2か月連続の上昇とはなったものの、その勢いが5月以降継続されるのかは不分明ですし、3月、4月の2か月連続の上昇でも、2月の低下分を補えてないというのが実勢ではないかと思います(勿論、今年の1月の指数値が極端に高いという面があることも事実だが)。

 

 ただ、いずれにせよ、熊本地震の鉱工業生産に及ぼした影響は結果的には、幸いにも軽微なものに留まったということだけは、確かです。

 

 

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