経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

平成28年1月の月次GDPの状況について

 昨年、第3次産業活動指数や鉱工業指数を用いて、GDPを再現する(回帰推計)試みを御紹介しました。今回は、その枠組みを用いて、データの出揃っている2016年1月の月次GDPを推計してみました。

 

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<概要>
 平成28年1月の月次GDPの状況は、前期(平成28年10-12月期)GDP水準から横ばいという走り出しだったが、産業活動別にみるとプラス要因とマイナス要因が拮抗。
 内訳をみると、個人消費の大部分を占める対個人サービスと非耐久消費財の総供給がマイナスに寄与する一方、耐久消費財の総供給や投資関連財の総供給、生産財の輸出がプラスに寄与しており、今後の方向感は見えづらい状況。
 中長期的視点から見た先行きについては、下支え要因として、上昇トレンドを持つ対個人サービスや非耐久消費財の総供給が挙げられるが、このところ増勢が鈍化しており、牽引力としては期待できない状況。これに対して、耐久消費財や投資関連財の総供給、生産財の輸出は、需要環境の改善が図られない限り下押しリスクとなりうる。

 

1.1月のGDPの推移

 平成28年1月の月次GDPは103.0(22年=100)と、平成27年10-12月期のGDPの水準(103.0、22年=100)から横ばいで推移(図1)。 

 

図1 GDP及び月次GDPの推移

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2.産業活動別に要因分解した月次GDPの動き

 全体でみると横ばいで推移した月次GDPを産業活動別に要因分解してみると、プラス要因とマイナス要因が拮抗(図2)。

 特徴としては、個人消費の大部分を占める広義対個人サービス(除.小売業)と非耐久消費財の総供給がマイナス寄与となった一方、耐久消費財が大きくプラスに寄与したほか、投資関連指標である建設財の総供給及び資本財(除.輸送機械)の総供給、生産財の輸出もプラスに寄与した。

 

図2 産業活動別にみた月次GDPの変動寄与

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3.産業活動別の動向
 各需要部門に対応する供給側の活動を、より中長期的視点から確認していく。

 

(1)消費
 月次GDPにおいて最も貢献度の高い広義対個人サービス(除.小売業)は、中長期的には上昇基調で推移しているものの、ここ数年は増勢が鈍化してきており、足下の動きをみても横ばい基調で推移している。

 上昇トレンドの背景には、高齢化による医療,福祉の活動上昇があるものと考えられるが、同時に生産年齢人口の減少等が消費の押し下げ要因となり、上記のような状況を生み出していると考えられる。
 月次GDPに対して2番目に貢献度の高い非耐久消費財の総供給も、中長期的に上昇基調で推移しているが、26年4月の消費税率引上げの影響により一時大きく落ち込んだ。しかし、その後は上昇基調に復している。28年1月は大きく低下に寄与しているが、元々変動が大きいため、動向を見守る必要がある。
 耐久消費財の総供給は、上記の活動指標に比べて貢献度が低いが、変動幅が大きいため、しばしば月次GDPの変動に大きな影響を及ぼす。中長期的には、リーマン・ショックからの持ち直し以降、低下傾向で推移している。28年1月に大きく上昇に寄与しているが、元々変動が大きい上、中長期的には低下傾向で推移しているため、需要環境の改善等が図られない限り、GDPへのプラス貢献への期待は小さい。

 

(2)投資
 4番目にGDPへの貢献度が高い建設財の総供給は、23年以降上昇基調で推移してきたが、消費税率引上げのあった26年4月以降は動きが低迷しており、押し下げ要因となっている。28年1月は上昇に寄与したが、好材料が見当たらない中、持ち直しが期待できる状況にはない。
 資本財(除.輸送機械)の総供給は、GDPへの貢献度は低いものの、リーマン・ショックからの持ち直し以降も上昇基調で推移しており、GDPを下支えしている。しかし、足下では弱い動きが続いており、1期先行系列であるため、来期もマイナス寄与が予定されている。

 

(3)輸出入
 3番目にGDPへの貢献度が高い生産財の輸出は、リーマン・ショックからの持ち直しの後、弱い動きが続いていたが、25年以降は円安方向への動きもあり上昇傾向が続いていた。しかし、27年以降は弱い動きが続いている。28年1月は上昇に寄与したが、海外経済の下押しリスクもあり、今後の動向は慎重にみる必要がある。
 GDPに対してコスト要因にあたる生産財の輸入は、上昇基調にある。

 

図3 産業活動別の動向

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(4)まとめ
 各産業活動の中長期的な動きを踏まえて、今後のGDPの押し上げ要因と押し下げ要因を整理すると、前者には広義対個人サービス(除.小売業)、非耐久消費財の総供給、後者には耐久消費財の総供給、建設財の総供給、資本財の総供給、生産財の輸出、生産財の輸入が含まれるものと考えられる。
 押し上げ要因である広義対個人サービス(除.小売業)、非耐久消費財の総供給は、GDPへの貢献度も高く、上昇基調にあることから、今後もGDPの下支えに寄与していくものと期待されるが、その効果は小さくなっていることも事実であり、牽引力としては期待できない。
 これに対して押し下げ要因については、さらに恒常的なものとそうでないものに分けることができる。前者には生産財の輸入、後者には耐久消費財の総供給、建設財の総供給、資本財の総供給、生産財の輸出が含まれる。生産財の輸入増それ自体は経済成長のバロメーターであるため、押し下げに留意する必要はないが、後者はかつてGDPの牽引役を担ってきたものであり、需要環境の改善が図られない限り、下押しリスクになりうるものである。

 

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<関連する指標>

 第3次産業活動指数、鉱工業生産指数、建設業活動指数を加重平均した全産業活動指数については、こちら。

最新結果の概要|全産業活動指数|経済産業省

 

◎お役立ちページ 
 各指数へは、こちらのページの「解析室公表各種HP」をご覧ください。 

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