経済解析室

第3次産業活動指数、鉱工業指数などを使って、経済産業の「今」について考えていきたいと思います。

在庫が積み上がっているが、在庫率は低い建設用クレーン、在庫率がかなり高い状態になっている軽乗用車

 昨年の消費増税後から在庫が積み上がり基調になっていますが、その在庫上昇は、鉱工業全体というよりは、2つほどの業種の影響が大きく、その中でも4つの品目の寄与が大きいことを見てきました。

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 そこで、これら品目の在庫が積み上がる背景事情を見ていきたいと思います。

 まず、土木建設機械です。

 特定サービス産業統計を確認すると、土木・建設機械レンタル業の契約額は、昨年の増税直後の4月は多少落ち込みましたが、その後は緩やか上昇基調となっており、5月の段階では、増税前の駆け込みもあった昨年3月の水準も超えています。

 また、建設業全体の活動状況を示す建設業活動指数をみても、昨年末までは公共土木事業が堅調でしたし、年明け平成27年に入ると民間の建築土木事業が回復してきています。

 こうしたことから、土木建設機械の需要は、昨年後半から今年の5月まで堅調に推移してきています。

 

 次に、輸送機械工業の乗用車、特に軽乗用車についてです。

 昨年、平成26年の軽乗用車の販売はとても好調で、年単位で過去最高を記録しているそうです。

 しかし、月次の販売台数の動きを見てみると、昨年7月に入って販売は急落していましたが、生産自体はそれほど低下しませんでした。さらに、今年、平成27年に入って、さらに販売台数が急に落ち込み、在庫が積み上がってしまいました。

 

 このように、同じく在庫が積み上がっている品目とは言っても、その需要動向には大きな違いあります。この違いを数値として定量的に把握することはできないのでしょうか。

 このために、出荷(=需要)と在庫の動きを整理し、連動させるて、在庫の状況を評価できるようにした指標が、「在庫率指数」です。この在庫率とは、在庫数量を出荷数量で割ったものであり、いわば出荷数量何ヶ月分の在庫を持っているのかという数値で、基準年の在庫率に対する現在の在庫率を比率で表しているのが、在庫率指数です(指数にしているのは、数量単位の異なる品目を足しあげて、鉱工業全体や業種ごとの在庫率指数を算出するためです)。

 在庫全体を上昇させている、建設用クレーン、ショベル系掘削機械、軽乗用車、小型乗用車の4品目の在庫率指数の動きを見てみると、品目間で大きな差があり、4品目とも上昇していた在庫指数の動きとは異なる動きを見せてくれます。

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 土木建設機械、特に建設用クレーンの在庫率は低い状態で推移しています。同じ土木建設機械のショベル系掘削機械も昨年中は、出荷が旺盛で、在庫率指数は低い状態で推移しています。このショベル系掘削機械の在庫率指数も今年に入って上昇し始めていますが、これは「オフロード規制」という規制変更への対応のために、目下、意図的に「作りだめ」しているからだそうです。

 一方、軽乗用車や小型乗用車では、昨年の消費増税から2、3か月経過して、受注残が解消された後は、在庫率が上昇し始めていました。特に、軽乗用車は、昨年後半に在庫率指数を低下させていたにもかかわらず、今年に入って、在庫率指数が急上昇していることが分かります。

 

 同じ在庫上昇寄与品目でも、在庫率指数という視点で見ると、その品目の受給状況が大きく異なっていることが分かります。つまり、出荷と在庫の受給バランスは、「在庫率指数」によって確認できるということになります。 

 
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